桜雪、散る
買ってきた肉まんを手渡すと、彼女はおいしそうに食べた。


「人がいっぱいだね」


駅前だから当たり前。


そうだ、こういうとこで路上ライブをやれば


少しは人が集まるんじゃないか?


僕は彼女が背負っているギターを指さして、ストロークのジェスチャーをした。

「ここで歌うの?」


そうそう。路地裏でやるよりよっぽど人が集まるよ。

「少し緊張…」


ギターを構えた彼女は恥ずかしそうにそう言った。


息を吸って、歌い始める。

1人、2人と彼女の前で足を止める。


曲が終わる頃には人だかりができていて、隣に座っていた僕はなんだかいたたまれない気持ちになった。
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