桜雪、散る
猫がもう一度鳴くと、歌が止んだ。


すぐ隣に段ボール箱。


中には、人。


……人?


段ボールの中に寝転がっていたその女の子は、


むくりと起き上がると僕をまじまじ見つめた。


パジャマ姿。手にはアコスティックギター。


こんな日に寒くないのかな。


現実場慣れしたその女の子と、無言で見つめ合う。


「…リクエストは」


リクエスト?
一体何の?


「…歌います」


ああ、歌のリクエストか。

僕が黙っていると彼女は勝手に歌いだした。


随分気の早い、クリスマスソングだった。


綺麗な清んだ声。


僕が知ってるどんな音よりも綺麗だった。


曲が終わる。思わず拍手する。


「はい」


ギターケースを差し出される。


「お駄賃下さい」


お金とるのか!


とは言っても僕には使い道のないお小遣いがたくさんあったから、


サイフから500円を出してひょいと入れた。
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