桜雪、散る
猫がゴロゴロと喉を鳴らしながら足にすりよってくる。

「あれ、珍しい。クロはあたしにしかなつかないと思ってた」


僕、猫苦手なんだけどな。


携帯電話を見ると、母からの着信が何件も入っていた。


まずい。今日は早く帰るって言っちゃったのに。


僕は立ち上がって帰ろうとした。


「また来てくれる?」


うん、まあ通り道だから来ることになるんだけど…


そう返事をする代わりに、

寒がりの僕が身につけていたコートとマフラーを脱いで


彼女にそっとかけた。
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