桜雪、散る
音をたてないように静かにドアを開ける。


それでも母さんはすぐに気付いて玄関に駆け付けた。

「陽太郎。こっちに来て座りなさい」


最悪だ。


どうやら今日の母さんは、機嫌が悪かったらしい。


説教が終わるまで2時間はかかるだろう。


「今日は早く終わったって言ってたのに、どうしてこんなに帰りが遅いの?」


僕は俯いて黙る。


路地裏で寝ていた女の子の路上ライブ見てましたなんてどう考えても信じてもらえない…


「学校の宿題だってたくさんあったでしょう!あんたには一秒も無駄にはできないのよ!」


だったら今すぐ解放してくれればいいのに…


「なんとか言ったらどうなの…そうよね、あんなは言えないのよね」


テーブルの下で拳をぎゅっと握る。
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