神威
遠藤の表情から、先程までの余裕は消えていた。
 
 
「せぇい!!」
 
 
橋口愛、いや沖田総司は振り上げた刀を腰の位置に構え、突きを繰り出した。
 
 
「ちいぃ!!厄介なっ!!」
 
 
後ろに跳躍して突きから逃れようとする遠藤。
しかし橋口の突きはそのまま、2段、3段と、橋口の前への踏み込みに合わせ、加えて長い刀身もありそのリーチを延ばしていた。
そしてその刀身の切っ先が遂に遠藤の脹ら脛を捉える。
 
 
「ぐっ…。」
 
 
捉えられた際にバランスを崩し、転倒する遠藤。
 
 
「悪いけど…遠藤君、いいえ、服部半蔵、これで終わりよ。」
 
 
「待てっ!!」
 
 
再度突きを繰り出そうとした橋口を後ろから三田が制した。
 
 
「三田…君?何で?」
 
 
「すまねえが、俺が売られた喧嘩なんだ。俺が決着つける。黙って見ててくれ。」
 
 
再び遠藤と対峙しようと三田は橋口の前へと足を延ばしたその時―。
 
 
「佐助!!甘いよ、本当に甘い!!また後で会おう。次は幸村!!…お前もだ。」
 
 
嘲笑を浮かべ、言い放つと、遠藤は三田達に背を向けて屋上の端まで一気に走り、その勢いを保ったまま、飛び降りた。
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