神威
遠藤が飛び降りて数秒後、屋上には三田と橋口、ゼーマンが残された。
夕暮れ時だが、それでも普段なら部活や何やらで人の気配が消えない筈の学校も、今日この日だけは何故か静かだ。
 
 
「おい…橋口、…ゼーマン…どうなってんてんだよ、これ。」
 
 
一人屋上の椅子に腰掛けながら、声にならない声で二人に問いかける三田。
その様子を見かねたように、ゼーマンが重く、口を開いた。
 
 
“まず、難しいかも知れないが、今から私の言うことを信じて欲しい。信長がこの街を平定すべく、動きだしたんだ。”
 
 
「…それが?それ信じて、今まであったことの何が関係あるってんだよ!!」
 
 
“本当にすまない…これも私の、先日の君らへの説明不足でもあり、こうなることを予期できなかった力不足だ。”
 
 
「だから!!俺が聞いてんのはそんなことじゃねえ!!」
 
 
三田は先程までただのクラスメイトだった遠藤に本気で殺されかけた、そして遠藤とのやりとりを通じ今まで見てきた、そしてこれからも変わらないと信じていた自分達の世界が崩れた、この疑問、不安を怒鳴ることでしかかき消す術がなかった。

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