ティラミス捧げます スイーツコメディ祭参加作品
「はぁ……」

大きなため息を一つ。


そんなオレの鼻をくすぐる匂いに、オレは思わず立ち止った。


赤いのれんが目に入る。



「よぉ、少年?」



たいやき屋の覆面店主がオレを見つけてそう言った。



つーか。
あの人にはじめて声掛けられたような気がする。

いつも「100円」とか「まいど」とか。
一言くらいしか聞いたことないし。

なんだよ?


「どうも」


オレを手招きする店主の前まで歩いていくと、覆面ごしに店主は笑った。


「この間のたいやきどうだった?」


なんか。
がっつりフレンドリーだな。


「はぁ。まぁ、悪くなかったです。っていうか、ティラミスおいしかったっす」


こんなうまいティラミスをなぜ、わざわざたいやきにしたのか、そこの意味がわかりませんが。



「そっか、そっか。やっぱ、アイツのレシピのおかげだな」

「それって、この間の……」

「ジブリール」

呼び捨てできるくらい仲いいんすか?


「あー。常連さんなの」


へぇ……そんなに買いに来てるの?


「少年よりも多いぞ」
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