【完】宛先不明のラブレター


あたしの様子がおかしいことがわかったのか、聡はあたしの顔を覗きこむように見てくる。

その目には、今にも泣きそうなあたしの顔と、不安の色が映っていた。




「…急にどうした? 昨日からおかしかったけど、」

「昨日、病院に行った。」

「何で? どこか病気?」

「そうじゃなくて…聡を、こっそり見に行ったの。 あと、奥さんも。」

「!」


ぴく、と反応する聡の顔を見ながら、あたしは目に力を入れて涙をこぼさないように必至だった。

少しでも気を抜いたらこぼれそうなほど、涙腺は限界だった。


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