【完】宛先不明のラブレター
「……昼時なら、奥さんが頻繁に来てるらしいから、こっそり見に行ってくれば。」
すぐにあたしの言葉を理解したらしい裕太はそう付け加えた。
「…詳しいね。」
「…、あの夫婦は、あの病院じゃ有名人なんだよ。」
『あの夫婦』
言葉だけで、心をえぐられたみたいだ。
…苦しい。
「……そ、う、なんだ」
そう答えるので、精一杯だった。
…わかってるくせに。
聡の横を堂々と歩いていいのは、あたしじゃないってことくらい、わかってるくせに。