満月の夜
「お父様、おはよう御座います」
「おはよう樹梨亜。今日もその姿か、お前は日に日に母に似てくるな。」
シャルミ-を抱え、お父様といつもどおりの挨拶を交わす。
規則正しく振る舞うように教え込まれた姿勢。
私の家は結構お金持ち。
一般的に言えば、私はお嬢様と言われる身分なのかもしれない。
姿を隠す私とは反対、堂々と生活するお父様は恐ろしい人だ…。
今でもお母様を愛し、殺されかけてもヴァンパイアを恨んでいない。
私とは正反対…。
「明日になれば……行くのか樹梨亜…」
「…はい。その為に向こう側の勉強を今まで必死にして来たのです。捕まっても、魔力で姿も隠せます…正体がバレる事はありません」
私は明日…
生まれて初めて向こうの世界へ行く。
あちら側では、人間年齢17歳になれば向こうの世界に通じる境界の扉を通る事ができる。
向こう側で魔力は使った事は無いけど、争いになっても負けない自信があった。
「樹梨亜…。愚かな事を考えるな…あの事はもういいのだ、樹梨亜がまだ許せないのは分かるが明日は満月…。そして赤月だ…ヴァンパイアの力が1番暴走する日だと知っているだろう…」
「……分かっています。でも私は─」
「樹梨亜、俺はもう誰も失いたくない。お前もそれは一緒だろう…分かってくれ」
つらそうな顔をするお父様。
分かっている
お父様の気持ちは分かっているの
…でも…
私は仇を目の前にして、許すような心は持ち合わせしていないの
だから…
「わかりました、お父様。」
許してください。