Treasure!
壁を背にしたまま、俺は歯噛みした。

こうなると逃げ場は左右しかなくなるが、それは男も予測済みだろう。

俺がどちらに逃げても対応してくる筈だ。

迂闊には動けない。

「素直にお宝を渡すべきだったな」

男のグルカナイフの切っ先が微かに動く。

その形状から、突くよりも斬る事に適している筈だ。

だったら次の攻撃も斬撃の筈。

俺は体を小さく縮こまらせて防御姿勢をとったまま、グルカナイフの動きを見極める。

「まぁ心配するな!」

男が動いた!

「すぐに連れの女も後を追わせてやるからよ!」
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