Treasure!
ローチ達の勢いが、完全に衰えた。

その時だった。

「……?」

突然、一匹のローチが俺達に背を向けて退き始める。

それを皮切りに、一匹、また一匹と。

俺達を包囲していたローチ達が退却し始めた。

その引き際は素早い。

百匹近い数が殺到していたというのに、いつの間にかローチ達は蜘蛛の子を散らすように退散してしまった。

「どういう事かしら…恐れをなして逃げた…?」

ティアが尚もグルカナイフを構えて警戒したまま言う。

確かに、ローチも野生動物には違いない。

野生動物は本能的に、自分より強い者には逆らわない。

しかし俺は、奴らが恐れをなしたとは思わなかった。

むしろ、俺達よりも強い『何か』の命令で、この場を退いたような…。



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