Treasure!
ゆっくりと、慎重に。

全身の神経を研ぎ澄ませたまま、俺とティアは廊下を歩く。

…何メートルも歩かないうちに、それはあった。

『ワクチン保管室』

一目で分かるプレートが扉に貼られている。

ここがEワクチンの在り処…。

俺はその扉の奥から伝わってくる殺気に警戒しながら、ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。

「ようこそ」

扉を開けた途端、声が聞こえた。

初めて聞く声。

過去に耳にした事のない声。

しかしその声が誰のものなのか、すぐに理解できた。

「…Eウイルスを使ったんだな…スカーフェイス」

俺は呟く。

…部屋の片隅。

顔に大きな傷を持つ一匹のローチが、その複眼を細めて笑ったような気がした。

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