cold pupil
「最近、倉庫に来てないみたいだな?」
"黒桜"の様子などは敏感に葛城さんに報告が入っているから、あたしが倉庫に来ていない事も聞いてるみたいだ。
「はい、最近は……。」
「どうした、お前が倉庫に来ないなんて珍しいじゃないか。」
「いえ、特別理由は……。」
成の事は絶対に言わない。
「……そうか。たまには、流衣達の相手もしてやれ。」
「はい。」
「いいぞ。」
あたしは立ち上がって、一礼をした。
部屋を出ようと思って、ドアノブに手をかけると、
「ペットは元気か?」
え?
あたしは振り返った。
「お前が最近飼いだしたペットだよ。」
何を言ってるの…?
「働き者だよなぁ。朝晩、お前の飯作って。」
あぁ、分かった。
隠す必要なんて、無かったんだ。
もう、"ばれてた"。
「……元気です。」
「そうか、そうか。それは良い事だな。」
「……はい。」
あたしは早くこの部屋から出たくて、また葛城さんに背を向けた時、
「華奈、覚えておけ。お前の事なんて、何でも分かるんだぞ。隠そうとしても無駄だ。流衣達には、まだ言っていない。今の内に、家に返してやる事だな。」
あたしは何も言わず、部屋を出た。