cold pupil
あたしは無言で立ち止まった。
振り返らなかった。
いや、振り返れなかった。
流衣のいつもより低い声に足がすくんで。
「なぁ。」
「な、何?」
声が上擦った。
「……思い出したのか?」
え?
あたしは、何を言っているのか分からず、振り返ってしまった。
「流衣………?」
流衣は悲しそうな、寂しそうな顔で、前を見ていた。
「思い出したのか?」
流衣は目線をこっちに向けながら言った。
「何を?」
本当に何を言ってるのか分からなかった。
「…………く。」
「え?」
「なんでもねぇ。」
「何、それ。」
「うっせ。」
流衣はそう言って、いつもの表情に戻った。
「ねぇ、帰って良い?」
「…………あぁ。」
「じゃ。」と言って、あたしは1階のフロアへと降りていった。