cold pupil
夜中。
部屋にこもっていた成は、さすがに腹が減り、キッチンに向かっていた途中、両親の話し声が聞こえた。
「春!春!」
「落ち着け!落ち着くんだ叶!」
春という名前を何回も呼ぶ、母、叶(カナエ)。
成は、ドアに耳を当て中の会話を聞こうとした。
「春はもう居ないんだ!」
「嘘よ、嘘!」
成は何がなんだか分からない。
普段は穏やかで静かな母なのに、どうしてこんなに取り乱しているのか、訳が分からなかった。
「春は死んだんだ!でも、ちゃんとお前が確かに愛情を注いでいる成は居るんだ!」
「春が、死んだ………?」
「そうだ、春は保育器の中で死んだんだ。」
叶を落ち着かせようとする父、優(ユウ)。
「春……………、ごめんねっ!ごめんね!!」
「お前のせいじゃ無いんだよ。春は元々体が弱かったんだ。それに、今はちゃんと"成"がいるだろ?」
「でもっ……
成はあたしの本当の子じゃないじゃない!!!」
成はその言葉に持っていたペットボトルと皿を落とした。
そして、逃げるように外へ走っていき、バイクに飛び乗った。
――――――――――――――……