cold pupil
「あ、のね………。」
話したら、嫌われるかもしれない。
でも、嫌われるのも当たり前かもしれない、嘘ついて、騙してたんだから。
でも、往生際の悪いあたしは、この期に及んでも、成に嫌われたくなかった。
「あた、し………。」
「華奈さん、何も言わなくて良いですよ。」
そう言って成はあたしを抱き締めた。
「成?」
「言わなくても、分かってますから。」
分かってる?
何を?
もし、あたしの話事を分かってるんなら、
なんで?
なんで、怒らないの、何も言わないの………。
「華奈さんは、華奈さんが酔い潰れた日を覚えてますか?」
覚えてる。
記憶はあまり無いけど、多分成が来てからチョット経ったくらいの時だった筈。
「あの日、酔い潰れた華奈さんをベッドに運ぼうとしたら、華奈さんが"風呂入る"って言うから、風呂場に連れてったんです。
そしたら、華奈さんがいきなり脱ごうとするから、慌てて出ようとしたら、間に合わなくて………。」
「まじ!?」
あたしは、成の前で脱いだのか………、最悪。
「本当です。で、見たんですよ、華奈さんの背中にある"桜"を。」
………見たんだ、成は。
あたしの右肩から、背中上半分に描かれている"黒い桜"を。
「"黒桜"の話は嫌でもこっちに入ってきます。だから、知ってました。」
うん、"黒風"の幹部だもんね。
多分、成が知ってたのは、
"黒桜の女には、黒い桜がある"
「でも、おかしいと思ったんです。"黒桜"の女の筈なのに、護衛は誰も居なくて、華奈さんに誰も会いに来なかった。」
それは………、
「あたしが、"黒桜"の女になったのは2年前。高1の時だった。」
「そんな前から?」
「うん。驚かないで聞いてよ。あたし、中1から中3までの記憶無いんだよね。」
「え!?」
だから、驚かないでって言ったのに。