カクレンボ
序章
バスケットボールの重い音とバッシュが床と擦れる音が心地良く響く。南高バスケットボール部といえば、県内でも有数の強豪校だ。その分練習は厳しく、部員は少ない。
俺は壁に凭れバッシュの紐を結んでいた。ふと声を掛けられ頭を上げると同じく二年生の藤村が何やら表情を輝かせている。
「なんだよ」
「お前、知ってるか?ひとりかくれんぼ」
「ああ、知ってるけど」
何だよと思いつつ素っ気なく返答をすると、俺の言葉を聞いた藤村は酷く驚いた表情を見せた。
恐らく、藤村は俺が「ひとりかくれんぼ」を知らずあまつさえ興味津々といった様子でその詳細を聞くことを期待していたのだろう。
俺は馬鹿かと心中毒づいた。ほとんど全てに無関心なのだ。