三度目の指づめ

聞き覚えのないその声はテノールで耳障りだった。
ネチネチと張り付く様な口調の声の主。

見上げれば…身知らぬ小太りな中年親父だった。
あたしは一瞬にして、見上げたことに後悔を感じた。

目的は、明解だ。



『ねえ。聞いてるのか?!!』



ピクリとも反応しないあたしに苛立ちを覚えた中年親父ゎ少し腹に力を入れ怒鳴る。
この頃からあたしゎ無視が得意だったのだと改めて思う。
横を見れば、先程の親父の投げ出した足が丁度鞄の上に乗っていた。

直感的に飲んだくれと理解した。


全く…厄介な連中だ。

あたしは社会の影だか、他人様に危害は加えない。
人畜無害なだけなのだ。
雲の様に…気付けばそこにぉり、何時しか流れ消えて行く、そんな存在なのだ。


『貴方に関係なぃです。』



思い切り鞄を親父の足から救出する。その瞬間、いとも簡単にバランスを崩した親父はヘナヘナと腰を抜かした。
滑稽だ。
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