三度目の指づめ

『んにすんだクソ餓鬼があ!!!』


否、親父がよろめいた逆の足を軸に馬鹿力であたしの腹に蹴りを入れた。
めり込む泥に汚れた革靴。


『い゛っ!』


声にならない腹痛がメリメリ体を往復した。
丁度へそ上辺りに命中した親父の蹴りは鈍い音と共に繰り返ぇされる。
必死に己の下唇を噛んだ。

こんな時…悲鳴など出ない。

ただ、ぐぐもった悲痛音だけが虚しく雨音に掻き消された。



『生意気な餓鬼があ!!!根性を叩き直してゃる!!!!!おらっおらっ!!』



まるで…何かに取り付かれた儀式の様に親父は爪先を食い込ませる。
制服はいつの間にか親父の靴後とヘドロに汚れ砂利の味さえした。

気がした。
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