三度目の指づめ

瞬き後には、ピクリとも反応せず肉の塊は雨に打たれていた。何とも哀れな姿だった。

しばらくして、酔いが醒めたのか、怖じけ付いたのか、親父は滴るYシャツを拭いもせず一目散に闇へと吸われて行った。
その足取りはもつれ、眼鏡のレンズが水溜まりに沈んでいた。



“余程効いたのだろう”




呆気に取られていたあたしはただ状況を把握するのが精一杯だった。

助けられたらしい。

そんな遅い解答が出された。


『あっ、ありがとう…ござい…ます。』



目を合わせることが出来なかった。吸い込まれてしまいそうなオーラに圧倒されていた。
言葉さえ、詰まってしまう。

あたしはそう小さく呟いた後、ひたすら男の雨を弾く革靴を見つめていた。
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