三度目の指づめ

准には付き合って一年になる彼氏がいる。
バーテンのMASTERでもぁる『霧乃』だ。
みなからは…“霧乃MASTER”と密かに呼ばれていた。
名前は一切語らない。
准でさぇ、“霧ちゃん”と呼びまるでそれが名前でぁるかの様に違和感さぇ感じさせない。

霧乃MASTERは何時もカウンターの1番端が指定席で、そこ以外の場所に立つ姿を見た時は、その日1日幸運だ、という程マレだった。
口数は少なく…声の音量さぇ小さい。
霧乃MASTERと話すほとんどの者は…初めの内一心に耳を傾け言葉を聞き取る努力をするが、しまいには諦めて、彼の雰囲気で察知する様になる。
准レベルになれば、霧乃MASTERが口を数回上下させただけで理解出来るそうだ。

そのレベルに達するまでは絶えまない努力が必要だ。

だから、結局…大半の者が霧乃MASTERと会話をしたがらない。
いゃ、出来なかった。
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