三度目の指づめ
『あんた、もぅ帰って来なくてぃいよ。』
あたしの部屋に顔を出した母親は、服を整頓していた背中にそぅ突き放した。
姿が見えないはずなのに…母親の死体の様な血の通わない蒼白な顔が見えた。
気がした。
『………。』
無言で聞き逃すあたしに、最後の蹴りを入れた。
『残った荷物は、捨てるから。そのつもりでいな。』
吐き捨てる様に…冷血だった。
“冗談ぢゃあなぃんだ”
あたしは冷静にそぅ思ったのを覚えている。
手短に…荷物をまとめる。こんな時、一体何を入れたらぃいか分からなかった。
御泊まり気分では済まされない。
どれもこれも、見捨てられず、グルリと物色した後…結局…鞄に入ったのは、下着とワックスと鏡だった。
“これぢゃあ、只の御泊まり会並だ”
一人、苦笑した。
全部大切で、順番など決められない。