三度目の指づめ

つむじ当たりに痛い程注がれる…冷めた視線。
霧乃MASTERは口を閉じたまま静かに眺めていた。

鈍い反応の体をゆっくり起こし上げる。
直に打った顎が割れたかと思う程…痺れていた。
無意識に左手で押さえ…無惨にも散乱した煙草と中身が漏れたヨーグルトを右手に掴みとる。
決して振り向かない。
否、振り向けない。合わせる顔などない。

目深を深く垂らし…レジに商品を置く。

店員の丸々した瞳が瞬間的に見えた。

“もぅ、ここに来れないよ”


己のふがいなさが犇々と身に染みた。骨の髄まで。



「あっ、お客様…怪我はなぃですか?!」


少し申し訳なさそぅに、店員が口を溢した。
控え目な台詞が…更に悲しくなる。
気を使われれば、使われる程…先程の赤っ恥じが現実だったのだと知らしめられた。

『穴がぁったら入りたい』

こんなにも感じた事は久々だ。
今すぐにでも蒸発したかった。
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