三度目の指づめ


結局…あたし一人の妄想は儚く玉砕した。


「待てよ。絆創膏が確か…」


余った右手で内ポケットをまさぐる。
まるで…保健室の教師並だ。
決して…患部でぁる顎の固定は解除してくれない。

その間にもあたしは林檎の様に赤面し熱って要るのが自分でも分かる。
明らかに太陽の熱とは異なる、内側からの熱…
思わず…視線に困った。
上向きの状態で…霧乃MASTERの襟元を見つめる。
鎖骨が綺麗だった。

ふわりと漂う…甘美なまでの香水…気まで麻痺してしまぃそうな。


「ょし。完了だ。」


可愛らしい絆創膏が顎に貼られた。明らかに幼児用の…うざぎがプリントされた蛍光ピンクの絆創膏…
反射した蛍光ピンクが浮く。
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