三度目の指づめ

「うん。…あたしの中でもはまだ、美沙子ゎ生きてるから…」



振り向かずに答える。

ただ足元の砂利に視線を落とした。
何故か鈴の顔を見る勇気が無かった。その回答ゎ逃げだったのかも知れない。
そぅ、自覚したのかも知れない。

あたしゎ黙り混む。

悪行を犯した死刑囚みたく、呼吸すら躊躇った。
降り注ぐ場違いな程の燦々とした太陽。
あたしの影を伸ばして行く。
と、同時に足元に微かに映る鈴の頭部の影が不気味に視界に焼き付いた。


淀んだ空気が包み込む。


長い沈黙を破ったのは、先程ょり鼻詰まりなトーンの鈴だった。



「美沙子ってさあ。何時も変わってたょね。」



誰に話掛けるでもなく、ひたすら見えない存在に語り掛ける鈴。肩までのミディアムが風になびいた。
初夏にピッタリのハイビスカスのシャンプーが微かに匂う。
心地好い。
あたしゎ…仁王立ちのまま背後からの語り部に相づちさえ打たず砂利を睨みつける。




「美沙子さあ…ょく三人で塾帰りにコンビニのおでん食べた時、『おでんの王様は卵だ』ってぃって喧嘩になったょね。」


ふと、息の抜けた笑いが漏れた。
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