三度目の指づめ
『なあ。ここには、ビールなぃの??』
聞き覚えのあるざらついた声。ネチネチした雑音…
無駄に、語尾を上げる発音さぇ昔と何も変わっていない。
あたしは静かに上目使いをし、辺りを確認した。
どうゃら、アイツが声を掛けたのはあたしの反対側に居る店員の様だった。
カウンターからネッシィみたく目だけ沿わした。
茶髪になったアイツは…青剃りのままでタンクトップに作業着姿だった。
この位置にいても、汗の臭いが漂いそうな程むさ苦しい格好…
明らかに異質だった。
完全にこの雰囲気に負けてるのに、気にも止めず酒場同様にビールを注文していた。
店員が丁重に説明している。
この位置からだと、アイツの顔は見えないが…長年同じ屋根の下いた者同士暗黙の了解故に、分かった。
苛立ってる。
そぅ…相当に、だ。