まい ひーろー 【短】
聞き間違いかと思った。
『っ…ほ、ほんとに?』
嘘じゃない?
夢じゃない?
そう問いかけると先輩は柔らかく笑って
『嘘でも夢でもない…。好きだ。』
そう言って先輩はあたしを抱き締めたまま、少しずつ、本当のことを教えてくれた。
『…俺、お前のこと、美都って呼んだだろ?
本当は俺、全部覚えてた。美都が忘れてることも全部。』
『…あたしの忘れてること…?』
『あぁ。
…お前を痴漢から助ける前に俺たちは会ってるんだよ。
美都…昔、近所に『はぁくん』っていなかったか?』
………はぁくん…?
あ…!!!
『先輩が…はぁくん?』
はぁくん。
あたしが小学校3年生の時にひっこしてしまった近所のお兄ちゃん。
いつも一緒に遊んでくれていて…。
『思い出した?…ひどいよな。せっかく助けてやったのにお前は忘れてたんだぜ?』
泣きたかったのはこっちだよ。
そう言う先輩。
その顔は苦笑に満ちていて、なんだか申し訳ない。