まい ひーろー 【短】
現在。
あの日、あたしははじめて母の意見に逆らった。
矢竹先輩の着ていた制服、…聖陵(せいりょう)高校にいきたい、そう伝えた。
エリート主義の母はギリギリまであたしを大学付属の高校にいかせようとしてたけど、諦めないあたしに最後は譲ってくれた。
そして、念願の高校に入学して3ヶ月。
先輩についてたくさんのことを聞いた。
先輩は勉強は苦手だけど、運動は得意。
サッカー部にはいっている。
明るくて優しくてかっこいい先輩は、みんなの人気者。
…あたしがこの図書準備室にいるのは、ここからサッカー部の練習がよく見えるから。
一階のグランド側にある図書室はサッカー部がよく見える。
だけど、図書室だと人が多いから…。
だから隣の準備室。
先生を騙すのに、少しのスリルと罪悪感。
だけど、それよりも、こうして先輩を見れることが幸せだった。