大人になれないファーストラバー
あたしは質問を変えてまた聞いてみた。
「今も大人になりたくない?」
それはあたしの最近の最大の悩みであり、疑問であり、願いであり。
同い年なのにあたしより全然しっかりしてる観月の考えを聞いてみたかった。
あたしが真剣な眼差しを向けると、観月は軽く吹き出した。
「今は早く大人になりたいかな」
それから落ち着いた声音でそう言った。
「早く一人前になって、誰にも頼らなくてもいいくらい強くなって、あたしが支えてあげたい」
"同い年の女の子"とは思えないほどかっこいいこと言ってる観月。
支えてあげたいのはきっと地味なカメラマンのことを指してるんだろう。
観月の強さの源は、その人のことを好きっていう気持ちからくるんだと、そう思った。
きっと。
今のあたしたちは大人でもなく子どもでもなくて、すごく中途半端なとこにいる。
だから揺らぐし、立ち止まるし。
早く大人になるか、ずるずると子どもでいるのか。
あたしはまだ観月のようには決められない。
「…そっか。早く大人になれるといいね。」
「うんっ」
あたしの低めの声とは裏腹に、弾む声で答えた観月。
その笑顔にちょっとだけ強さをわけてもらったような気がして、泣きそうになった。