大人になれないファーストラバー
「黙ってんじゃねえよっ」
なにも表情を浮かべない蕾にかっとなって、ついつい声を荒げてしまう。
目逸らすなっ、と続けて言いながら顎を引き寄せて無理矢理正面を向かせた。
「なんでなんだよっ」
細かいことを色々聞きたい気持ちはあるのだけれど、どれも早く聞き出したくて。
気持ちが焦ってそれしか言えなかった。
「なんで…っ」
悲痛な声をあげ、情けなくも泣きそうになる。
涙目になるところも普段なら見せたくないと意地を張るけど、今はなりふり構っていられない。
「…サク、それは…だからだよ」
ようやく開いた蕾の口。
だが、それは途切れ途切れで。
「んだよ…っ よく聞こえねんだよっ」
わざと聞こえないように声を小さくしたように聞こえて、もどかしさでどうにはなりそうになった。
「だから、サクと一緒じゃ、大人になれないからだよ」
相変わらず表情のない蕾。
でも実はその瞳がうるんでいたなんて。
そんなことに気付けるような余裕は、狂い始めた俺にはもはやなかった。