大人になれないファーストラバー
危うく地面に顔面をぶつけそうになったが、手をついてなんとかそれを防いだ。
こんな時だけは、部活で腕立て200回やっててよかったと思う。
「見損なったよ橋本くんっ」
そいつは背中に覆い被さったまま、わけの分からないことをほざいた。
「んだ、葉山かよ」
「なんだとはなんだっ」
体を捻って後ろを見ると、葉山は俺の肩にアゴを乗せてきて。
俺は「顔近いっ」って言いながら、無理矢理それをどけた。
「つか、見損なったってなんだよ」
「見損なったんだよっ」
「だからなんでだよっ」
まったくどうして俺の周りのやつはこうも会話が進まないやつが多いんだろう。
佐伯にしても葉山にしても。一番厄介なのは蕾だけど。
まともなのって言えば、阿宮とか観月ぐらい。
俺が眉間にシワを寄せてあからさまに呆れた顔をすると、葉山は「シワ!」と人差し指で指摘してくる。
俺はその指を払いのけ、もう一度話しを聞こうと試みた。
「で、なんの用だよ」
こっちはちゃんと会話しようとしてんのに、葉山はまた「シワ!」と指摘してきやがった。