大人になれないファーストラバー
放課後玄関を出ると、2年になってからは毎日のようにそこで待ち伏せしてる男がいる。
サッカー部の顧問らしいんだけど。
正直顔が怖くて、いつも目を合わせないようにして帰ってる。
たまに話しかけられた時には笑顔で返事するけど。
帰りは少し急いでるから、申し訳ないけど早く帰らせて欲しかった。
だって早く駅に行かないと、同じ電車に乗れないんだ。
首から提げた年季の入ったカメラ。くたびれたシャツに破れ放題のジーンズ。
おまけに頭はボサボサで、前髪で目が隠れている。
そんな、異臭を放つそいつに出会ったのは、中学2年の春。
この頃はあたしは体が弱くて、入退院を繰り返してた。
その日もまた検査のために入院していて、病院の中庭を一人で散歩してる時だった。
カシャッ
いきなり耳元でそんな音がして、振り返ると、そいつはいた。
「可愛いね。君。」
目が合うと、第一声がそれだった。
なんだこいつ。
最初は当然そう思った。
警戒しながら、睨み付けていると。
「君さ、もう少し大きくなったらモデルんなってよ。」
にへらっと笑ってそう言うと、そいつはふらふらと去っていったのだった。