大人になれないファーストラバー



放課後玄関を出ると、2年になってからは毎日のようにそこで待ち伏せしてる男がいる。



サッカー部の顧問らしいんだけど。
正直顔が怖くて、いつも目を合わせないようにして帰ってる。




たまに話しかけられた時には笑顔で返事するけど。
帰りは少し急いでるから、申し訳ないけど早く帰らせて欲しかった。





だって早く駅に行かないと、同じ電車に乗れないんだ。




首から提げた年季の入ったカメラ。くたびれたシャツに破れ放題のジーンズ。
おまけに頭はボサボサで、前髪で目が隠れている。




そんな、異臭を放つそいつに出会ったのは、中学2年の春。

この頃はあたしは体が弱くて、入退院を繰り返してた。



その日もまた検査のために入院していて、病院の中庭を一人で散歩してる時だった。





カシャッ



いきなり耳元でそんな音がして、振り返ると、そいつはいた。





「可愛いね。君。」




目が合うと、第一声がそれだった。




なんだこいつ。
最初は当然そう思った。

警戒しながら、睨み付けていると。




「君さ、もう少し大きくなったらモデルんなってよ。」




にへらっと笑ってそう言うと、そいつはふらふらと去っていったのだった。



< 219 / 423 >

この作品をシェア

pagetop