大人になれないファーストラバー
次にそいつを見かけたのは、体も割りと丈夫になってきた中学3年の夏。
電車でだった。
その時のあたしの服装と言ったら、まるっきり男で。
まだそれが私服だったからよかったものの、制服を着ていたら即刻バレていた。
昔から「女みたいな顔」ってよく言われてはいるけど。中身は男なわけで。もちろん体も男。
華奢だし、肩幅あんまりなかったし、胸のない「女」に見えても仕方ないかもしれないけど。
実はあたしの本当の正体は「男」。
そう。男なのだ。
なのに、だ。
電車で見かけたそいつはあたしに気づくと言った。
「あ、やっぱどんどん綺麗になるね。」
って。
絶対女と間違えてる。
そう思ったけど、関わりたくなかったから何も言わなかった。