大人になれないファーストラバー
第6章 目を瞑って
*
「アヤー」
「ん?」
「ここ分かんない」
あたしは数学の問題集をこれでもかってぐらい開いて観月の机の上に置いた。
数学は苦手だ。
数学が好きな人には悪いけど、あたしからすれば「こんな難しいものを考え出しやがって」としか思えない。
一学期が終わりを告げ、一昨日から夏休みが始まったのだけど。
あたしと観月は相変わらず制服で学校に通っていた。
いわゆる、補習ってやつだ。
なんでこんな暑い時期にこんな暑い教室に来なくてはいけないのか。
なぜサマーバケーションに突入してまで大嫌いな数学を勉強しなければならないのか。
全ては成績不振な自分が悪いのだが。
納得いかず、補習中は常に不機嫌な顔で過ごしていた。
「んと、ここはねぇ…
分かんないっ」
と、観月は爽やかに笑った。
あまりにもあっさりとしたその反応にあたしは項垂れる。
観月は一応理数系らしいが、あくまで理科専門であって数学は論外だと言う。
ほんと、数学なんて論外だ。
基本を必死で覚えたって、テストに出るのは応用ばっかり。
今まで何度それで裏切られたことか。