大人になれないファーストラバー


名残惜しさからついつい咲之助のほうに視線を向けてしまう。

公然とは見られないから、控え目にうつ向き加減で気付かれないようにちらっとだけ見ると。






「咲之助っ ここ分かんなーいっ 1ページ目の問2っ」




咲之助の背後からマユナが抱きついていってそんなことを言った。




ちょうどそんな場面を見てしまい、やっぱり見なければよかったって後悔して目を逸らした。





「蕾ーっ 問2分かったよっ」



心が沈みかけた瞬間、観月の明るい声がそれをすくいあげてくれる。




「え、ほんと?」


「ほんとっ ほらっ」


「アヤ頭いいー」




合ってるかどうかは分からないが、答えらしいものを書けたという事実に素直に感動した。




「よしっ じゃぁ解けたし帰ろっかっ」



観月は問題集をパタンと閉じ、机に転がっていた消しゴムやらの筆記用具も片付け始めた。




「でもまだ先生に見てもらってないよ」




ちょっと真面目っぽいことを言ったら、観月は「そんなの気にしないっ」って笑う。

その笑みがなんだか頼もしくて、まあいいかって、あたしも問題集を閉じた。



< 265 / 423 >

この作品をシェア

pagetop