大人になれないファーストラバー
第7章 偽り/咲之助

*




初めてのキスを奪われたのは確か6歳の時。


気付かれないようにしてたみたいだけど、バレバレだった。



あの日は学校から帰ってきてランドセルを放り投げて、そのままリビングでひっくり返ってたら眠くなってきて。




軽く夢を見ていた時に何やら気配を感じたのだ。
そしていきなり何かが唇に当たった。



驚いて目を開きそうになったけど、堪えて。
こっちこそバレないように薄目を開けた。



そしたら目を瞑ってる顔が鼻の先にあった。




それが分かると途端に顔が熱くなってきて、気付かれるのが嫌でわざと寝返りを打った。



そうすると、唇の先が触れるくらいの軽いキスは簡単に離れた。







その時は、キスの時に息を止めることも知らなくて、そのまま呼吸してたし。

でも考えてみると、寝てるはずなのにいきなり息しなくなったらおかしい。



そもそもあれが何なのかすら、たぶんよく分かっていなかった。





ほんと、気が付いたのはつい最近のこと。
キス自体は知っていたけれど、愛しいなんて気持ちが分かるまでは、キスの意味を軽く考えてた気がする。


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