大人になれないファーストラバー
あの時飛び出して行かなかったのは、なぜだろう。
他の男とキスするとこを黙って見てるなんて、なんで出来たのだろうか。
長くは見てられなくて、あの場から早々に立ち去った。
階段を降りている途中、筋が浮き立つほど握り締めた拳を加減なしで壁に打ち込んだ。
固い壁はそんなのでヒビが入ることもなく、イラついて何度も何度も拳をぶち当てた。
それがタケちゃんに見つかって、その後怒られたのは言うまでもない。
それっぽっちの思い出を残して、結局今年も部活三昧で夏休みは終ったのだった。
今は残暑の厳しい9月の上旬。
夏休みが終わってからすぐに体育祭の練習が始まっていた。
出場する種目はくじ引きで決められて。
長距離のほうが得意なのだが、短距離の競争に出ることになってしまった。
しかもその名は…
「借り物競争ーっ!?」
夏休み手前からの溜まり場となっている屋上で昼食のパンをかじっていると、右隣に座っていた葉山が突然叫んだ。
「お前さ、なんでそんなにウザイの?」
秋が近づいてもまだパワーの衰えない太陽に照らされても目をばっちり開いている葉山にそう聞くと、左隣にいた阿宮も共感したようで頷いた。