大人になれないファーストラバー
葉山と二人で屋上に取り残され、なんだか会話も途切れてしまった。
お互い目は合わせずに違う方向を見ている。
ちらっと葉山の方に目だけ向けると、葉山は遠い目をして校庭を眺めていた。
そしてその視線を追って俺も同じく屋上のしたに広がるグラウンドを見渡した。
「…橋本くんは佐伯マユナのこと好きなの?」
すると、なんの前触れもなく葉山が口を開く。
ふいを突かれてふと葉山の顔を見ると、さっきと変わらず校庭に目を向けたままだった。
いったい何を見ているのやら、気になるものの"聞けば早い"という頭はなかった。
「佐伯がいいの? 蕾ちゃんよりも?」
葉山の視線の先が気になっていて答えずにいると、さらに具体的な質問をされた。
うろたえると言うより、なんだか胸が苦しい質問。
そりゃぁ俺が好きなのは蕾だけど。
曖昧な関係ではあるものの、佐伯に支えてもらったことだってあるわけで。
「その質問、答えらんねえ」
言って、眩しい空から顔をそむけ、自分の黒い影が落ちる地面に目を落とした。