大人になれないファーストラバー



放課後になると天気は崩れ、分厚い雲が太陽を隠した。




窓の向こうに広がる、雲行きの怪しくなったそんな空を横目に見て、揺らぎそうになる決心を立て直した。



何度元来た道を戻ろうとしたことか。
"5歩進んでは3歩戻る"を繰り返して、結局2歩しか進んでないという驚異の歩行速度。

…遅すぎだ。






どうしてそこまでためらっているのかと言うと。

昼休みが終わる直前、ある人物にメールを送ったのだ。

『話したいことがある』、と。





待ち合わせ場所は図書室。

図書委員が帰ってから少しすると鍵がかかってしまうから、その鍵がかかるまでのわずかな間でことを済ませなければならない。





本当は、そんな短時間でさっさと終わらせていいものじゃないけれど。

だらだら話しをするとなんだかうまく丸め込まれてしまいそうだから。


今日は取りあえず自分の言いたいことだけを素直に話して帰ってしまおうと思う。





…と、決心したはずなのだが、なかなか図書室に入れないでいる。



実は今いるのは図書室の前の廊下で、さっきから行ったり来たりしてるだけの俺はなかなかドアにたどり着かない。



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