大人になれないファーストラバー
「ちょっと、どこ行くのっ」
ドアに手をかける寸前でマユナに肩を掴まれた。
「あんたがほんとは妊娠してなかったってサクに言いに行くのっ」
「離してっ」と、肩にあるマユナの手を無理矢理剥がそうとした。
「そんなことさせないからっ」
マユナも必死であたしの肩に指を食い込ませてくる。
「かわいそうだね、そんなやり方でしかサクを引き留められないなんて…っ」
マユナの手入れされた長い爪がどんどん食い込んで来て、痛さに耐えながらそう言った。
「うるさいっ 何も努力しないで咲之助のそばにいられるあんたに言われたくないっ」
「努力してるっ 何も知らないくせにっ」
マユナの友達二人がもみ合うあたしたちを止めに入って来た。
「やめなよ」
「やりすぎたよ」
二人は困ったような顔で、あたしの肩を掴んでいるマユナの手を引き離そうとした。
「なんであんたみたいのが咲之助幼なじみなんだよ…っ」
押さえに入る二人を振り払うと、マユナは肩を掴む手をそのままに、もう片方の手を振り上げた。
咄嗟に目を瞑ると、頬を叩かれ、乾いた音が響く。
瞬間、視界がぶれて足がよろめいた。