大人になれないファーストラバー
第9章 遅咲きの花/咲之助
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子供の頃、高校生って言えばすごく大人に見えた。
制服をだらしなく着て、仲間とつるんで、騒がしいくらいに笑ってる。
自分がその歳になって始めて気がつくんだ。
高校生ってこんなに子供っぽかいものだったのかって。
大人ってなんだろう。
大人ってなんだろう。
蕾のことが好きだと気づいたその日から、その答えばっかり探してる。
でもついさっきその答えが見つかった。
自分の本当の気持ちはさらけ出さずに、ぐっと堪えて笑うんだ。
そう。
大事な人の前では頼もしく笑うんだ。
悲しいことを背負ってても、重くないふりして。
「大丈夫。心配するな。」
そう言えるようになった俺は、きっともう大人だ。
学校を出てから宛もなく歩いて、自分に言い聞かせるようにぐるぐると思考を巡らせていた。
気が付いた時には家の近所の坂の下の公園前で。
輝きを失った瞳は、その公園で戯れている子供たち3人を映した。
灰色の空の下で冷えきった体は、その場で固まったように動かなくなった。