大人になれないファーストラバー
その3人は、どうやら登校途中のようで、それぞれ青、黒、赤のランドセルを背負っていた。
「あいちゃんはぼくのおよめさんだよっ」
「おれのだよっ」
「ケンカしないでっ」
声変わりなんてまだずっと先の男の子2人が、将来勝気になりそうな女の子に同時に叩かれた。
青いランドセルを背負った気の弱そうな男の子の方は涙を浮かべ、ガキ大将っぽい黒のランドセルを背負った子の方は「いってえなっ」と赤いランドセルの女の子に怒鳴っている。
なんだか笑えてきてしまって、それと一緒に切なくなった。
初恋の人と結婚するんだと、いったい何人の子どもが夢見るのだろう。
小さい頃にした「結婚しようね」の約束を果たせたのは、これまでに何人いるのだろう。
何も知らなかったあの頃。
戻りたい、もう少し前の自分だったらそう思っただろう。
けど、今あんなふうに話している子供たちを見ると、何も知らないことが少し可哀想に思えた。
本当に可哀想なのは、怖いものをたくさん知って、手も足も出ない情けない自分なのに。