大人になれないファーストラバー
雨音の手は歯形がくっきり付いていたけど、なんとか貫通はしてないようでほっとする。
が、安心したのもつかの間、今度は雨音は俺の腕に噛みついてきた。
「―っ」
驚いて声も出なかった。
雨音の歯がブラウス越しの腕に食い込んでいく。
そんな異様な様子に今までにないくらい目を見開いていた。
痛みを感じ出したのは、状況を飲み込めて来たそのすぐ後だった。
「雨…音っ」
やばいと思った。
ブラウスにぷつぷつと赤い点が出来てきて、出血し始めたことが分かった。
「何がしたいんだよお前はっ」
腕を力ずくで引き離そうとすると、ブラウスがビリッと音を立てて袖が破れた。
なんだかそれに無償にイラッと来て、部活のヘディングで鍛えた頭を使って雨音の額に頭突きをかました。
すると、雨音はコンクリに頭を打ち付けてパタリと動かなくなった。
「ったく、んだよ」
ボソリと毒づくと、
「…ごめん」
と、気絶したのかと思っていた雨音は目を開いていて。
掠れた声でそう言った。