大人になれないファーストラバー
「そっか。じゃぁあたしにも分かるね。サクの気持ち。」
相変わらず感情のこもってない声。けどそれはとても穏やかだった。
「あたし、ここに来て雷の音聞いてたら全部思い出したよ。
サクにひどいこと言ったことも、観月が倒れたことも。」
それを聞いて、蕾が俺以外のことを忘れたままならよかったと、一瞬そう思った。
けど、頭を振ってそんな考えはすぐに消し去る。
"もしも"を考えると虚しくなるだけだから。
「それで気づいたの。 弱い自分を強い人に守ってもらいたいんじゃなくて、」
蕾が一息置いた。
次に続く言葉が、なぜかはっきりと分かって。
「お互いを支え合いながら生きていける存在が、欲しかったんだ。」
と、蕾が口を開くより一拍早く俺はそう言っていた。
「うん。あたしたちはみんな弱いから、大事な人を守りたくて強くなろうとするんだね。」
そうだ。
だから「好き」って言葉は勇気をくれるんだ。
こんな大切なことに気付けなかったのは、きっと今までそばにいすぎたせいだ。