大人になれないファーストラバー


ブラウスのボタンを閉め、カーデガンを着た上にブレザーを羽織る。



靴下は黒で、長さは膝上まで伸びる。
学校の校章のワンポイントがある指定のやつだ。







着替えを終え、部屋を出て一階に降りていくと、




「ほらっ 朝飯っ」


「んもがっ」




マーガリンも何もついてない生の食パンを、口に思いきり詰め込まれる。




窒息しそうになって胸を叩いていると、1リットルのパックの牛乳を渡され強引に玄関まで引っ張られた。







「ふぬ ふぬぅーっ」
(死ぬ 死ぬぅーっ)



「いいから右足上げろっ」


「ほふはいっ」
(よくないっ)




パンが肺に入りそうになってゴホゴホ咳き込む。

苦しんでるあたしなんか無視して、咲之助はあたしの右足を持ち上げるとローファーを履かせた。





なんかこの図、ちょっとシンデレラっぽいかも…。



しゃがみこんで靴を履かす咲之助を見下ろしながら、そんな妄想をしはじめる。


現実は、なかなか喉を通っていかない食パンの耳を懸命に飲み込んでるわけで。
シンデレラとはかけ離れてるけど。




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