大人になれないファーストラバー



「うそ、ほんと?」


「ほんとっ」





その時の蕾は朝日よりも遥かに眩しくて、見ていたらなんだか涙が出てきた。





「赤ちゃんが産まれたら、なんて名前つける?」




それを知られないように顔をくしゃくしゃにして笑って、目を細めてそう聞いた。





「"花"がいい」



「それもし男が産まれたらどうすんだよー」



「その時はまた考える。」




蕾の喜びをたたえていた顔が、いつも通りの無表情に戻ったもんでついゲラゲラ笑ってしまった。





「おいこら、そこのバカ2人、早く学校行かないと遅刻するよっ」




佐伯も外に出て来て、俺たちのそんなやり取りを見てそう言った。





「あたしはバカじゃない。 サクだけにしてよ。」




本気で嫌そうな顔をする蕾。
その憎たらしく愛しい頬を俺は軽くつねった。




「バカサク」




言って、蕾はベーっと舌を出すと、いつの間にか俺たちを通り越して先を歩いていた佐伯を追いかけて行った。





俺は蕾の後ろ姿にベーっとし返してから、またゆっくりと歩き出した。




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