大人になれないファーストラバー


「なんであたしのだって分かったの」





自分だけ傘に守られながら素朴な疑問をぶつける。





「なんでって、こんなちっこい靴履いてんのお前しかいないだろ」






高1にもなるあたしの足は20.5。
そんなミクロな足に合う靴だから、下駄箱に並ぶ靴の中でもおそらく最小だろう。


言われてみれば、確かにと頷ける。






「それに」





咲之助はまだ続きがあるみたいに言葉を途切り、古びた自転車の剥げかけた青に視線を落とした。





「…やりたかったんだろ。シンデレラごっこ。」





あんなにこだわっておいて、思わぬ発言にはっとする。





そして改めて咲之助を見ると、髪はもちろん寝癖なんかと比べものにならないくらいあっちこちに髪が跳ね上がっているし。

制服も汗だか雨だかで濡れて重たそうに見えた。




あたしの靴を包んでたタオルをぶこつな日に焼けた手に持って、顔をあげずに白い息を吐いてる。





なんだかボロボロな目の前の幼なじみ。

雨にやられてどんどんぺったんこになるその頭の上に、そっとピンクのビニール傘をかざした。








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