大人になれないファーストラバー
俺ってアイロンのプロかも。
蕾の髪を挟んで伸ばしてを繰り返していると、さっき生まれた後悔はだんだんと薄まっていった。
ゆるやかなクセのある蕾の髪を余すとこなくスーパーストレートにし終わり、『今日もいい仕事してますねぇ』と心のなかで呟いた。
「終わった」
「ありがと」
短い会話を済ませ、アイロンのコードをコンセントから引き抜く。
持ち帰るのは蕾の役だから、コードでぐるぐる巻きにして蕾の革のカバンに突っ込んだ。
その流れを手早く済ませて。
一息つく間もなく、昼休み前に購買で取り合いをしてようやく手に入れたパンを押し込みように口に入れた。
職員室近くで待ち合わせをしてるから、そろそろそこに向かわないといけない。
「どこ行くの?」
「職員室」
詳しくは言わず、ぼそっと答えると。
蕾はついて来ると言うので(予想はしてた)、それを突っぱね、ゴミ箱にパンの袋を投げ込んで足早に保健室を後にした。
「待ってっ」と言う声が後ろから聞こえたけど。
何しろ待ち合わせ場所には一人で来いと言われたので、聞こえないふりをする。
数メートル離れてから蕾が追いかけてきてないことを確認し、小走りで職員室に向かった。