この心臓が錆びるまで
「確かに、あんたのこと見てたけど」
どこからだと思う?と先輩は口角を吊り上げる
「木の陰から?」
「ブー。上からだよ」
くい、と顎で空を指す先輩。上を向いた先輩の顎から首にかけての美しすぎるラインに思わず見惚れる。我に返った私は、先輩が見上げる空をぽかん、と見つめた。
「……天使?」
「あんた、アホだろ?」
「失礼な!」
私は至って真面目です!そう言おうと思ってやめた。だってそんなこと言ったら本格的にアホ決定だ。
「降参です」
「仕方ないなあ。ほら、あそこ」
眩しそうに細められた翡翠の見つめる先には――、
「おく、じょう?」
北校舎の屋上があった。校舎の窓からでは木が邪魔してここは見えないけれど、確かに屋上からなら見えるかもしれない。先輩を見れば、頷いてくれる。
「あそこ、俺のサボり場。あそこから毎日あんたのこと見てた」
「やっぱストーカーじゃないですか!」
私は思わず吹き出した。先輩はうるせえ、と不機嫌にでもどこか恥ずかしそうに吐き捨ててどっかりと椅子に座り直した。そのままこっちを見ようとしない先輩が、なんだか可愛く思えた。